HSCPプロジェクト終了&CIは体制強化へ、他

クライオニクス・マガジン(第26号 2001/6)

体調不全にて怠慢号になってしまいました。反省(-_-;)

======================================================
HSCPプロジェクト終了 & CIは体制強化へ
======================================================

JCAともつきあいの深いPaul Wakferの主宰したプロジェクト
HSCPの終了報告がでました。3月号でお知らせした進捗と
そんなに大きく変わることはありませんので訳しません。
人間関係のもつれ等により最終的にBen Bestが幕ひきを
しました。報告原文は以下にあります。

http://www.kanon.to/hscp.txt

何度かお伝えしたようにHSCPは非常に重要な意味を持つ研究でした。
一定の成果をあげましたが、後継プロジェクトが立ち上がらず
おわってしまったことは残念です。後継ができなかった理由が
お金でも研究の行き詰まりでもなく人間関係であったことが
大きなショックでした。

これで、cryonicsに資金を投入して研究をしているのは21世紀研究所
だけになりました。が、いいことがひとつあります。HSCPでも中心人物
のDr. Yuri Pichugin がCI(Cryonics Institute)と協力関係を強化
しています。

これまで、CIはクライオニクス創始者エッチンガーの団体でありながら
アルコーに大きく遅れを取ってきました。その大きな理由は技術格差で、
今年はじめ、アルコーがvitrificationでの保存サービス開始をアナウンス
したとき、もうCIもお終いかとウワサされたものでした。しかし、
アルコーが米国外に住む人が会員になるための条件を強化したことも
あって多くのクライオニキストがCI支持にくら替えしています。
そんな中での研究体制強化です。今後のCIに期待しましょう。

CI : http://www.cryonics.org/

============クライオニクス・マガジン============
・毎月1日発行
・発行者:JCA(e-mail : cryo-j@kanon.to)
・発行人:山本 邦雄
・このメールマガジンは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』
を利用して発行しています。( http://www.mag2.com/ )
http://www.kanon.to/jcamag.htmlから登録・解除ができます。
・本メールマガジンはパブジーンからも発行しています。
http://www.pubzine.com/detail.asp?id=793
から登録・解除ができます。
=================================================

いかに老化をコントロールするか?、他

クライオニクス・マガジン(第25号 2001/5)

マガジン発行2周年です。2周年に相応しい記事があります。
ソウル・ケントの最新レポートです。

======================================================
いかに老化をコントロールするか?
======================================================

クライオニクスの世界では最も中心的人物であったソウル・ケントが
ひさびさにまとまったレポートを書きました。もちろん現在でも中心
人物と言えるのですが、彼自身は現時点ではクライオニクスについて
あまり言及しないという姿勢を貫いているからです。Life Extension
全般について研究をしており、低温保存技術はその一部であると
繰り返し言っています。ちなみに低温保存としてはcryopreservation
という言葉だけでcryonicsという言葉はでてきません。

記事の原文は以下で読めますが、主なところだけ日本語で要約します。
http://www.lef.org/magazine/mag2001/apr2001_awsi.html

−−−−−−−−−−

Life Extension Foundationは2000年はかつてない資金を投入し
様々なプロジェクトを行なった。最近ではgene chipを使って老化を
どうやって食い止めるか発見するための研究がある。この研究は小さな
ねずみではすでに成果があり2人の学者により発表されている。
(くわしくはLife Extensionマガジン1999年11月号を参照)
2000年はこの2人の学者の研究に資金を提供した。また、猿を対象
にした同様の研究にも資金提供している。具体的な研究の例をあげる。
カロリー制限が寿命を延ばすことはよく知られており、カロリー制限を
したねずみとしないねずみの違いをgene chipを使って調べる、などの
研究を行なっているのである。

また、低温保存の研究にも力を入れている。現在、移植のマーケットは
少ない。それは提供臓器に対する身体の拒否反応のためである。
遺伝子工学によって移植のための臓器を作り出そうという研究に
1千億円もの資金が投入されている。われわれは、この臓器を低温保存
する技術では世界の先頭を走っている。南カリフォルニアの研究所で
ウサギの腎臓についてほぼ成功し、現在は心臓と角膜を対象に研究を
進めている。近い将来、脳をのぞくすべての臓器が取り替え可能に
なるだろう。

また、われわれは脳の保存にも取り組んでいる。これは現在の医療では
治る見込みのない患者を治療法が開発されるまで保存しておくことを
可能にするためである。建築家のStephen Valentineと協力し、
Timeshipと呼ばれるハイテク施設を設計した。ここで脳を保存するため
の研究が行なわれる。また、南カリフォルニアの研究所では臓器の急速
低温化技術も持っており、緊急治療の分野で使うことが期待される。
この研究所では17分間、低温で保存した犬を完全に回復させるという
成果を達成している。もちろん酸素の補給がない17分間である。

米国にはビタミン剤など老化防止の薬を売る会社は多数ある。
しかしLife Extension Foundationのみが老化について本質的な研究まで
行なっている。われわれから買うことは研究を支援することである。
会員のみなさんに感謝する。

======================================================
JCA春のミーティング報告
======================================================

JCAのミーティングでは、2か月前ソウル・ケントに
会ってきた方も参加され、刺激的な会合になりました。
ソウルは日本での薬販売に関心があるということで、
さっそくJCAではソウルとメールで相談を始めました。
日本で多く販売できればそれだけ資金も増えるわけです。
この件、いっしょにやってくださる方を募集します。
医療関係者、製薬会社関係者のかた特に歓迎です。
関心あるかたはcryo-j@kanon.toまで。

============クライオニクス・マガジン============
・毎月1日発行
・発行者:JCA(e-mail : cryo-j@kanon.to)
・発行人:山本 邦雄
・このメールマガジンは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』
を利用して発行しています。( http://www.mag2.com/ )
http://www.kanon.to/jcamag.htmlから登録・解除ができます。
・本メールマガジンはパブジーンからも発行しています。
http://www.pubzine.com/detail.asp?id=793
から登録・解除ができます。
=================================================

375817
M-200105032320000000015596000

GLASS TRANSITION PROJECT の提案、他

クライオニクス・マガジン(第24号 2001/4)

今月はALCOR関連の記事とJCAオフのお知らせです。

======================================================
GLASS TRANSITION PROJECT の提案
======================================================

ALCORの代表者フレッドから正式に標記プロジェクトの提案が
公表されました。ひとことでいえばVitrification(ガラス化)
技術による身体全体の低温保存サービスを開発することです。
このニュースでは繰り返し述べていますが、現在のALCORの
保存技術は20年以上前に開発されたものです。現在
盛んに研究されているVitrificationでの保存は、昨年末に
やっとALCORが頭部のみの保存に適用したばかりです。
(詳細は1月号をお読みください)

この技術を身体全体に適用するための費用ALCORはざっと
2000万円と見積り、資金集めを開始しています。
簡単に「適用」と言っても、以下のような課題を解決
しなければなりません。
(1)死直後処置の改善
(2)直後処置をするメンバへのトレーニング
− トレーニングプログラムは全面見直しです。
(3)恒久的処置の改善
(4)長期保管施設の拡充
(5)協力できる医者のリクルート
このプロジェクトに資金を提供したいという方は、
jlemler@alcor.orgにコンタクトください。JCAが
ご紹介することも可能です。何度か紹介している
HSCPを始め、いくつか「完全な保存」のための研究が
走っています。それに比べれば現在のVitrification
技術でのサービスはレベルが低いわけですが、
実際に提供できる「サービス」の開発では現在もALCOR
がトップを走っています。多くの資金が集まることが
期待されます。

======================================================
Dr. Jerry Lemler アルコーのCryoTransportの責任者に
======================================================

前の記事のメールアドレスは、最近アルコーのCryoTransport
(主に死の直後処置の部分を指します)の責任者になった
Jerry Lemler博士のものです。ALCORではこのポジションに
やっと医療専門家を迎えることができるようになりました。
「え? 低温保存は医者がやるのではなかったの?」と驚かれる
かもしれませんが、クライオニクスは「冷凍葬儀屋」と揶揄される
時代からここまで成長しました。が、冷凍葬儀屋の時代にも、
ALCORのMikeやJerry(医療のの世界では「しろうと」)より、
損傷が少ない状態で死体を保存できる医者はいませんでした。
低温工学が医療の世界でメジャーになるにつれ、両者は少しずつ
近づいてきたわけです。
前の記事の(5)に示すように、博士は自分の就任と同時に他の
医者のリクルートも初めています。クライオニクスも新しい時代
にはいってきたと言えるのかもしれません。

======================================================
JCA春のミーティングは4月21日夕方
======================================================

ひさしぶりにJCAのミーティングが開かれます。
活動の活発な米国に比べ見劣りする日本で、何をやっていくか
真剣な討議をする予定です。多くの方の参加をお待ちして
おります。関心あるかたはcryo-j@kanon.toまで。

============クライオニクス・マガジン============
・毎月1日発行
・発行者:JCA(e-mail : cryo-j@kanon.to)
・発行人:山本 邦雄
・このメールマガジンは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』
を利用して発行しています。( http://www.mag2.com/ )
http://www.kanon.to/jcamag.htmlから登録・解除ができます。
・本メールマガジンはパブジーンからも発行しています。
http://www.pubzine.com/detail.asp?id=793
から登録・解除ができます。
=================================================

HSCPの進捗報告と諸計画について、他

クライオニクス・マガジン(第23号 2001/3)

今月は久々に長めの訳文があります。JCAともつきあいの
深いPaul Wakferの主宰するプロジェクトHSCPの進捗報告です。
(HSCP : Hippocampal Slice Cryopreservation Project)
その他、日本の小さな記事二つです。

======================================================
HSCPの進捗報告と諸計画について
======================================================

Asilomarミーティング前までに、HSCPは、統合された大型神経
系統の冷凍保存技術(これまで科学雑誌などにまったく公表さ
れていない最新技術)を大幅に改善することができた。脳の
海馬薄片を普通のグリセロール(脳の冷凍保存に最適)を使っ
て様々な方法で凍らせると、ドライアイス温度から解凍された
後の生存率の変動が±5%程度に抑えられることがわかった。
21CMが新しく開発したガラス化溶液(最も単純かつ基本的な
溶液Veg)でガラス化させた海馬薄片は、切り取ったばかりの
未処置薄片の53%のカリウム/ナトリウム輸送容量で再生した。
これによって、「冷凍/解凍を経た薄片は氷の形成/溶解時
にかなりの構造的な損傷を被るが、ガラス化と加温によって
そういった損傷がなくなると思われる」という仮説が強力に
裏づけられた。このため、新しい手法を使えば、従来の手法に
比べて機能が大幅に再生し、構造もかなり保護できるように
なると思われる。

Asilomarミーティング以降は、この成果をさらに改善しようと
いう試みがなされてきた。そして2001年1月9日、ガラス化/
復温を施したラット海馬薄片の生存率を約66%にまで上げること
ができた。この種の実験では、より高度なガラス化溶剤を使用
しなければならず、それには凍結保護物質の追加・除去方法を
さらに改善する必要があったため、研究は思ったよりも遅々と
して進まなかった。損傷を受けた薄片は浸透圧、温度、時間
などに影響されやすいので、従来の追加・洗浄方法方法はもは
や決して好ましいとは言えなかった。また、浸透までに時間が
かかる非浸透性の凍結保護物質もあるため、薄片を高濃度の凍結
保護物質に長時間浸してガラス化させなければならなかった。
これまでは平衡時間(equilibration time)は10分間しか取って
いなかったが、これだけでは薄片を-130度まで冷却してから加温
しても、望むような結果が得られず、結果にもかなりバラツキが
あった。しかし、平衡時間(equilibration time)を20分間まで
延ばすと、ガラス化後の再生率が66%にまで伸びた。ガラス化前に
凍結保護物質に浸す時間をさらに延長すれば、あるいは溶液の濃度
を調節して平衡(equilibration)をスピードアップさせれば、
さらに若干改善できるかもしれない。

現在、脳薄片の機能再生率は66%となっているが、これは、ウサギ
の腎臓薄片をガラス化/復温させた際のK/Na比の回復率
(21CMで行なった実験による)と偶然にもまったく同じ数字である。
移植およびin vivo再生後に細胞が長期間生存するには、この率で
十分だと間接的に示す証拠もある。ラットの海馬薄片のK/Na比を
上げるために、凍結保護物質に浸してから長期間培養し、自己修復
が見られるかどうかを観察してみたが、8時間以上培養しても、
明白な改善は認められなかった。「66%の再生」ということは、
34%の細胞がすべて失われて66%だけが完全に生き残ったということ
ではない。むしろ「各細胞の機能の66%が再生した」と我々は考えて
いる。電子顕微鏡級の固定剤(electron microscopy grade fixative)
によって修復された薄片もある。今後は、これらの薄片の構造を調べて、
すべての細胞における損傷の有無を確認したり、ガラス化/復温後も
脳薄片の構造に変化が見られないかどうかを確認する。現時点では、
これらの標本がまだ調査されていないため、細胞構造に関する検査結果
は出ていない。今後、研究が進むにつれ、この溝は埋まっていくだろう。
ガラス化後の細胞構造維持についても、さらなる研究結果が出てくる
はずである。

注)予備知識がない方に読んでいただくのは難しかろうと思いましたが、
あえて訳文を掲載しました。「完全な保存」までの道のりの長さ
を実感いただければ幸いです。

======================================================
三菱商事 ナノテク投資ファンドを創設
======================================================

三菱商事は4月にも、クライオニクス関連のキーテクノロジー
であるナノテクノロジー分野を対象にしたファンドを創設する。
規模は1億ドルを予定しており、ナノテクを応用した新素材、
医療技術などの開発を手がけるベンチャー企業に投資する。
ナノテク応用製品の国内市場は2010年には19兆円に
達すると予想されている。

======================================================
ハルペリンの”The First Immortal”の翻訳者決まる
======================================================

選定が遅れていましたが、角川から出版が決まっている
“The First Immortal”の翻訳者が決まりました。このSFは
13万語という大作で、翻訳を引受けてくださる方がなかなか
見つかりませんでした。訳に9月までかかるそうで、出版は来年
になる見込みです。引受けてくださった方は内田昌之さんです。
最近ではロバート・J・ソウヤーの「フレームシフト」などを
訳されています。なお、ハリペリンの処女作(”The First
Immortal”は2作目)の”The Truth Machine”も角川からでています
(邦題は「天才アームストロングのたったひとつの嘘」)
出版のときはハルペリンさんを日本に招く予定です。

============クライオニクス・マガジン============
・毎月1日発行
・発行者:JCA(e-mail : cryo-j@kanon.to)
・発行人:山本 邦雄
・このメールマガジンは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』
を利用して発行しています。( http://www.mag2.com/ )
http://www.kanon.to/jcamag.htmlから登録・解除ができます。
・本メールマガジンはパブジーンからも発行しています。
http://www.pubzine.com/detail.asp?id=793
から登録・解除ができます。
=================================================

Life Extension Foundation から “TIMESHIP” 発表、他

クライオニクス・マガジン(第22号 2001/2)

今月も記事一本だけです。が、なかなか興味深いですゾ!

======================================================
Life Extension Foundation から “TIMESHIP” 発表
======================================================

クライオニクスに詳しいかたなら Life Extension Foundation
の名前は聞いたことがあるでしょう。クライオニクス界の重鎮
ソウル・ケントが興した会社で、ビタミン剤の販売を中心に事業
に成功し、現在ではこの会社が年間2億円がクライオニクス
関連の研究資金として投入されています。この会社が最近
TIMESHIPという大きな研究所を設立することは発表しました。
クライオニクスのみならず多くの低温工学、生物学の研究室が
入ることができるばかりでなく、低温保存された(サスペンション
措置を施した)1万人以上患者を収容することができるそうです。
イニシャルコストだけでも20億円という大プロジェクトです。

この発表とともににLife Extension Foundation自身の会員獲得
キャンペーンが動いています。ビタミン・ホルモンの使い方を
始めとして延命に必要な情報を得るとしたらこの会社が一番でしょう。
年間の会費は75ドルです。詳細は http://www.lef.org へどうぞ。

============クライオニクス・マガジン============
・毎月1日発行
・発行者:JCA(e-mail : cryo-j@kanon.to)
・発行人:山本 邦雄
・このメールマガジンは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』
を利用して発行しています。( http://www.mag2.com/ )
http://www.kanon.to/jcamag.htmlから登録・解除ができます。
・本メールマガジンはパブジーンからも発行しています。
http://www.pubzine.com/detail.asp?id=793
から登録・解除ができます。
=================================================